北海道犬の飼育を続けて半世紀、札幌の男性のもとに今年5匹の子犬が生まれました。
《「血統を絶やさぬ」半世紀にわたる男性の想い》
梅本博さん(80)「ここから下に見て」
生まれて2日目の子犬です。
・井元小雪記者「小さい!目も開いてないんですね。でも毛はツヤツヤ。手のひらにすっぽりと収まります」
まだ、300gほどの大きさです。
飼い主は、梅本博さん80歳。札幌市で北海道犬を育てて半世紀が経ちました。
・梅本博さん「子犬を触っていると時間が経ってしまう」
北海道犬を手がける梅本さんには、ある思いがありました。
・梅本博さん「やっぱり動物でも植物でもなんでも“原種が大事なんだぞ”と。一人でもいいから、いれば原種は残るんだということを言われたのが30代のとき」
《国の天然記念物 北海道犬》
1937年に国の天然記念物に指定された、北海道犬。
1970年代の年間の繁殖数は約7000匹でしたが、近年はわずか約100匹にとどまっています。
・梅本博さん「アイヌの人たちはクマ猟に使っていた。そういう生い立ちの犬なんだよね」
北海道放送のライブラリーに、貴重な映像が残っていました。
みんなの視線の先には、クマ。クマを威嚇し、その技を競う北海道犬のコンテストです。
・梅本博さん「(北海道犬は)やっぱり顔つきとか、微動だにしないきちっとする格好とか、“動く絵”だと思っていつも犬を見ている」
《6種類の系統 現在は1種類に》
梅本さんの自宅には現在、北海道犬の成犬が6匹います。
「阿久媛(あくひめ)」「阿希雄(あきゆう)」「純有牙姫(じゅんゆうがひめ)」「北勇女(ほくゆうめ)」「純優女(じゅんゆうめ)」「北海純女(ほっかいじゅんめ)」。ちょっと変わった名前の成犬たちですが、これには理由があります。
・梅本博さん「血統図なんですけどね、僕はこの『阿久』から数えて15代目になるこの『北海猟王』にすっかり魅せられちゃってね。」
北海道犬には元々6種類の系統があり、現存しているのは梅本さんが飼育する千歳系のみ。
千歳系のルーツといわれているのが、1927年(昭和2年生まれ)生まれの「阿久(あく)」です。
そこから15代目にあたる「北海猟王(ほっかいりょうおう)」との出会いが梅本さんの人生を変えました。
・梅本博さん「体に見合ったこの胸幅。力強い後ろ足の立ち具合。尾もキリッと巻き具合が力強いんですよね」
これまで、血統を大切にした名前をつけているのだそうです。
《子犬が産まれて3週間》
子犬が生まれて3週間が経ちました。
・井元小雪記者「あ!目が合った!ぬいぐるみみたいですね」
・梅本博さん「生まれてすぐとだいぶ違うでしょ」
・井元小雪記者「つぶらな瞳ですね。あ~あったかい」
・梅本博さん「これ子どもの父親です。きょう初めて顔合わせです。(Q.自分の子どもだとわかってる?)いや、わからないと思うよ、どの子にも優しいんだわ」
「これよくなるなと思う子犬は、いい骨格だなというのは手から伝わってくる」
・井元小雪記者「このまま連れて帰りたい。一緒に帰るか?
《北海道犬を次の世代へ》
半世紀にわたり、北海道犬を手がけてきた梅本さんですが、次の世代へ繋げたいと思っています。
この日、梅本さん宅を訪れたのは、宮城県に住むご夫婦。
男性は20年ほど前まで、「北海道犬」を飼育していました。梅本さんの存在を知り、遠く宮城から会いに来たのです。
・宮城県在住「(飼っていた)『二代猟王』は、(北海猟王の)息子だったんですよ」
かつて飼育していた北海道犬は、梅本さんが惚れ込んだ『北海猟王』の血筋を受け継ぐ犬でもありました。
・宮城県在住「Q.(梅本さんは血統を大事にしているが?)梅本さんは特別な方。こだわりの。ここまでやらないと保存できなくなりますから。数が減っているのも事実だと思う」
梅本さんは、大切にしてきた血統を受け継いでくれる人に、子犬を譲りたいと思っています。
・梅本博さん「自然体で絵になる犬が僕からしたら“いい犬”だなという考え方。その血筋をずっと受け継いでいってほしい」


コメント